IoT機器の安全・安心を保証するナノ光セキュリティシステムの開発
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社会生活を取り巻くIoT機器の数が指数関数的に増大し続ける現代において、個々の機器類の安心・安全を保証するセキュリティ技術の開発と普及は、普遍かつ火急の研究課題です。
本テーマでは、透かしやホログラムをはじめとする既存の物理セキュリティ階層に加え、ナノ光技術に基づいて機能する新たなセキュリティ階層を構築する「ナノ光メトリクス」の研究開発を行います。
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我々は、ICチップを対象に加工した複製不可能な超微細構造を、各チップに固有の識別情報として個体認証に活用することを提案しています(左図)。
このような超微細構造の読み取りには、元来電子顕微鏡や原子間力顕微鏡といった一般用途に即さない高度な計測機器を用いますが、
本研究ではごく一般的な白色光源を用いた干渉計測技術を応用することで簡便な読み取りとその読み取り結果を用いた高い認証制度を実現しています(右図;赤線がFMR(誤一致率)曲線、青線がFNMR(誤不一致率)曲線)。
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[Ref]
NEDO「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/研究開発項目:革新的AIエッジコンピューティング技術の開発」,「AIエッジデバイスの横断的なセキュリティ評価に必要な基盤技術の研究開発」 (平成30年度〜平成32年度)
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物理人工知能の実現に向けた機械学習用光アーキテクチャの開発
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高効率な情報処理を実行する上で「並列化」は単純かつ効果的な方策の一つですが、既存のエレクトロニクスにおいてアーキテクチャレベルで「並列化」を実装するのは決して簡単ではありません。
一方で、光技術の分野においては、その要素媒体である光自身が空間並列性および多次元性を体現していることもあり、ごく一般的に並列処理が活用されます。
本テーマでは、ナノ光技術に基づき、目下並列化による大規模演算系の実現が強く望まれている機械学習の分野において専用のナノ光アーキテクチャの開発を行います。
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我々は、機械学習における代表的な実行モデルであるニューラルネットワークを、蛍光ナノ微粒子・量子ドットの分散構造で作成します。
外部からの光信号の入力により量子ドットネットワーク内部に励起された局在場のエネルギーは、蛍光として即時に放射されたりネットワーク内を自律的に伝搬した後に放射されたりと、ネットワーク構造に応じた多様な振る舞いを見せます。
その結果、量子ドットネットワーク全体からの蛍光出力は、入力に対して単純な線形関係でなく、ニューラルネットワークとして機能する上で本質的な非線形の入出力関係を示すことになります。
本研究では、試作した量子ドットネットワークに対する超短パルスレーザーの入射により発現する時間−空間蛍光出力を単一光子レベルで計測することで量子ドットネットワークの性能評価(左図)を行うと共に、
得られた光入出力関係を元に実際に機械学習のデモンストレーション(右図)に取り組んでいます。
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[Ref]
平成30年度 JST CREST「コンピューティング基盤」領域,「光ニューラルネットワークの時空間ダイナミクスに基づく計算基盤技術」(平成30年度〜令和5年度)
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E-mail: tate[at]ed.kyushu-u.ac.jp