研究内容:

  令和7年度現在、本研究グループにて特に注力している3テーマについては下段にて個別に紹介していますが、そのほか、下図に示す種々のキーワードに関連する多様な研究活動に従事しています。 本研究グループでの活動にご関心がおありの方は、メール(tate[at]ed.kyushu-u.ac.jp)もしくは問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

ナノx光x情報@たてらぼ

量子ドットエンジニアリングに基づく光コンピューティング技術の開発

2023年のノーベル化学賞の対象となった半導体ナノ微粒子「量子ドット」は、単なる蛍光を発する材料というだけではなく、その材質・寸法・配置・環境等々に応じて多様な側面を見せる、魅力的な光素材です。 本テーマでは、量子ドットを構成要素として作製する微小光ニューラルネットワークを軸に、多様な光コンピューティングの実証・実装を行います。

光コンピューティングアーキテクチャ@たてらぼ

我々は、機械学習における代表的な実行モデルであるニューラルネットワークを、量子ドットのランダム分散構造で作成します。 外部からの光信号の入力により量子ドットネットワーク内部に励起された局在場のエネルギーは、蛍光として即時に放射されたりネットワーク内を自律的に伝搬した後に放射されたりと、ネットワーク構造に応じた多様な振る舞いを見せます。 その結果、量子ドットネットワーク全体からの蛍光出力は、入力に対して単純な線形関係でなく、ニューラルネットワークとして機能する上で本質的な非線形の入出力関係を示すことになります。 本研究では、試作した量子ドットネットワークに対する超短パルスレーザーの入射により発現する時間−空間蛍光出力を単一光子レベルで計測することで量子ドットネットワークの性能評価(左図)を行うと共に、 得られた光入出力関係を元に実際に機械学習のデモンストレーション(右図)に取り組んでいます。

[Ref]  平成30年度 JST CREST「コンピューティング基盤」領域,「光ニューラルネットワークの時空間ダイナミクスに基づく計算基盤技術」(平成30年度〜令和5年度)

半導体ICチップの安全・安心を保証するナノ光メトリクスの開発

身の回りのデジタル機器の数が指数関数的に増大し続ける現代において、個々の機器類の安心・安全を保証するセキュリティ技術の開発と普及は火急の研究課題です。 本テーマでは、今や現代社会において水や空気のごとく存在する大量の微小ICチップを対象に、先端光技術に基づいて新たなセキュリティ階層を構築する「ナノ光メトリクス」の開発を行います。

ナノ光メトリクス@たてらぼ

我々は、特にICチップを対象に付与した複製不可能な「微小光マーカー」が示す特徴的な光応答を、各チップに固有の識別情報として個体認証に活用することを提案しています(左図)。 「微小光マーカー」の特性はその寸法、形状、周辺構造、含有する蛍光材料の組成等に応じて多様に変化するため、作製時の微小な「ゆらぎ」によって多様な光応答=識別情報を実現できます。 本研究においては、インクジェット印刷方式を用いて量産した大量の「微小光マーカー」が発現する発振スペクトルが高い個別性を示すことを実証しています(右図)。

[Ref]  JIS規格X22387 「セキュリティ及びレジリエンス−製品及び文書の真正性、完全性及び信頼性−人工物メトリクスを利用する際の妥当性確認手順」
[Ref]  NEDO 経済安全保障重要技術育成プログラム,「半導体・電子機器等のハードウェアにおける不正機能排除のための検証基盤の確立」(2023年度〜2025年度)

ナノ光量子系の調整によるフォトンブリーディングデバイスの開発

フォトンブリーディングとは、微小スケールの物理系を適切に調整することで、その物理系の特質に応じた仕様をもつフォトンを生成するという、光源デバイスの設計・作製に対する新しい考え方です。 本テーマでは、このフォトンブリーディングに由来する特異な効果を光制御デバイスに応用し、従来にない光機能の実現や新規の応用分野への展開を目指します。

フォトンブリーディングデバイス@たてらぼ

我々は、Alイオンを添加したSiC材料を対象とした「DPPアニール」と称されるドーパント分布の最適化手法により、SiC材料中に内在するAlイオンの空間分布が有効なフォトン源として機能するよう調整しました。 その結果、当該デバイス(左図)が示す光変調特性は「アニール」時の条件に強く依存し、その条件に適合した光入力に対してのみ巨大な変調効果を示すことを初めて実証しました(右図)。 このような特徴を有する光変調は従来にないものであり、現在その機能メカニズムの解明を進めると共に、同デバイスでなければ実現し得ない応用システムの開発を推進中です。

E-mail: tate[at]ed.kyushu-u.ac.jp